Focus On Backyard(作り手たちの思い) :第2回 斉真希社長
DATE「LEGEND WALKER」が生まれて今年で20年。多くのファンや、リピーターに愛されてきたブランドのリブランディングを始めた2021年。この記事を読んでくださる皆さんにもっとLEGEND WALKERを知ってもらい、もっと身近に感じてもらえるように、サイトを運営しているメンバーの紹介していきます。
第2回は、斉真希社長。2021年1月から26歳の若さで社長に就任された背景や、感じたこと、ブランドの今後の展開・今思っていることについて語っていただきました。
T&Sという会社をお父様が作られた経緯を教えてもらえますか?
斉:父はもともと中国で美術学校を出てから来日し、32年前からグラフィックデザイナーをしていました。
日本多摩美術大学を卒業した後、貿易・営業など様々な職種を経験をし、2001年に今のT&Sを立ち上げました。
もともとがデザイナーでしたので、当時のスーツケース業界に変革をもたらしたく、自分でものづくりの夢を叶えたのだと思います。
真希社長は小学生の時から中国に行かれたとお聞きしましたが。。。
斉:そうですね、私は6歳までは越谷育ちでしたが、父が起業した2001年、小学一年生から北京での寮生活を始めました。
深い理由が何かあったんでしょうね。。
斉:どうでしょうか。。私は当時、父は私を捨てて、自分のキャリアを優先した人として見ていました。
母は行ったり来たりしてくれましたが、父は卒業式の時にだけ北京に来てくれて、毎回私の成長にびっくりしていました(笑)
大学卒業後、親のそばに戻りたいと思い、日本で就職しましたが、その時は約15年一緒に生活していなかったので、お互いどうしていいかわからないという感覚でした。
社長が2019年12月に倒れられて、2021年の1月に結果若くして社長になられたのですが、お父さんから「会社を継いでほしい」と言われたのですか?
斉:自分からやるといいました。実は、昔から父が私に何かを「やれ」と言ったことは一度もないんです。就職や転職で迷った時も、父からは「今でしかできないチャレンジを選べ」とうアドバイスをもらった覚えがあります。得意で確実にできることを選ぶのではなく、できるかどうか分からない事に挑戦することにより、悔いがない人生を過ごせるという事です。父自身も未知な国に留学し、外国人として起業し、常に「チャレンジ」を意識していたのかもしれません。
2019年12月、当時57歳の父が倒れ、約1年3カ月入院治療していました。幸い治療により、2020年8月には回復し始めたのですが、会社は社長不在の状態が半年以上たち、コロナの影響で先行きが見えない状態が続いてました。父の復帰を待ってられないと思い、入社の思いが芽生えました。
2019年9月、父へのプレゼントとして企画した八丈島の二人旅が、父が入院する前の最後の旅行となりました。
台風により、予定通りダイビングはできなかったが、親子で過ごした時間は一生の宝物です。
旅先でもLegend WalkerのTシャツを着ます(笑)
ただ自分は当時、ちょうど前職で新サービスの立ち上げの目処がついて、やりがいを感じる環境に恵まれていた時期だったのです。最高のチームとワクワクさせるようなサービス、辞めるなんて想像もできなかったです。
当時まだ25歳の自分が、まったく別の業界に飛び込み、いきなり社長をやるのも無理があるのではないかと思いました。ですが父が20年培ってきた事業、40人のスタッフと家族を見捨ててはいけないという思いが何よりも強かったのです。時には「20年前、父は私を中国に送り出し、彼は日本に残り、この会社を育てることを選んだ。もしこの会社がなくなってしまったら、父は何のために私を見捨てたのだ」と感情的にもなりました。
沢山迷いましたが、答えは最初からあったと思います。2020年10月、今回もチャレンジするということを自分で決めて、父に申し出しました。
今でも聞かれる度に思うのですが、私が会社を継いだのは、父のためではありません。私はこの会社のポテンシャルを信じていて、自分の手で更なる発展を目指せる勇気があるから、私がここでのチャレンジが他社にいるよりも大きなインパクトを生み出せるから、入社することを決意しました。
社長になられてみて感じてきたことはありますか?
斉:社長業はやってみないと分からない事、そして私の場合先輩がいないので誰にも聞けない事が沢山ありました。例えば経営判断をするとき、「父だったらどう考えるだろうか」と苦しんだ時期がありました。
自問自答をしながら進んできて、最近やっと「なりたい自分となれる自分」、そして会社にとってのベストがわかってきたところです。「私には父の様なカリスマ経営はできないし、やらない」と素直にチームの皆に話をしています。1年間社長不在・コロナ禍による業績悪化。社内で経営への不信感・部署間の分断が大きな課題でした。
少しでも人と人の距離を縮められるよう、四半期一回の全社会議、月一回の全社朝礼、毎朝の本社朝礼以外に、週次で社内報を発信するようにしました。
風通しが良く、信頼関係をもって、フラットに伝えることを心がけています。そしてある日、とある社員から「社長は社長の得意があるんですから、自分流で進めた方がいい」という声をもらうこともありました。
すごくうれしかったです。いままで自分のすべてが「前社長」と比較されている緊張がモチベーションに変わって、どうすれば父の時代より上手くできるかを前向きに考えられるようになりました。
カリスマ社長の父は常に会社の中心人物になり、一人で数十人を率いるスタイルでした。私は、全員同じ方向を向いて、ゆっくりでも構わないので、着実に一緒に進んでいきたいと思っています。今は大変な時期だからこそ、「共感」を大事に、辛いところを理解し合い、みんなで努力する上で企業価値を上げる。そういう意味でも、父を真似することを正解とせず、私なりの経営ができればと思っています。
「共感」は何に影響されたのですか?前の職場で学んだことでしょうか?
斉:以前は、「全員全力で走っていれば、会社は前に進む」という考え方でしたので、特に意識して「共感」という感じではなかったです(笑)数字が良いところであれば、特に共感が強調されなくても成功体験により一体感が醸成されると思いますが、今は結果が出しずらい状況だから内部のトラブルにが激化しやすいかもしれません。
それを見た時に、私はいま、何が大事かを伝えたいと思っていました。なので、前の会社で学んだというよりは、「今、一番欠けている大事なことを正したい」という危機意識からでした。ただ、根底には「人を大事にしたい」ということはあります。「人を大事にせず、成果だけの世界」ということに長く身を置いていたので、自分の周りにはそういう思いをさせたくないということはありました。
最後に、今後行いたいことや、夢はありますか?
斉:やはり人を大事にすることは行っていきたいと思っています。
今回STORIESというコンテンツを作ったのも「人」を大事にすることにあります。
「Legend Walker」のLegend、伝説を創るのは、スーツケースではなく「人」です。大それたものではなく、一歩踏み出したらそれはすべて冒険であり、その人にとって大事な「Legend」です。その人に物語があって、スーツケースが寄り添う形。人生があり、そこに溶け込むようにスーツケースがあってほしい。そう考えています。高度の機能が使われなければ何の意味もない。私たちは世界中の伝説を創る人々の役に立つことが目的です。
その人のモビリティ全般を支え、その人のライフスタイルの役に立ち、
そして、日本発・世界一のスーツケースブランドを目指していきます。
~真希社長が使うスーツケース~
スーツケースメーカーの家庭で育った真希社長は、昔からスーツケース選びにこだわりがあるんですかね?
斉:実は数年前まで、自分でスーツケースを選んで購入したことがなくて... 新品のスーツケースも使ったことがないんですよ。いつも父が開発に作った試作品や、テストに出したサンプル品を「世界で一つだけのスーツケース」として私にプレゼントしていました(笑)
スーツケースだらけの家で育ったので、小さい頃から商品知識を身に付けられましたし、晩御飯を食べながらみんなで「あったらいいな」を議論したり、デザインをレビューしたりしてました。私もモノづくりが好きなので、夏休みは父と一緒に中国の工場を見学したり、展示会を手伝ったり、父のデザインがレッドドット賞を受賞した時、私は通訳としてドイツの授賞式に同行しました。二十歳でこのような経験をさせてもらえてよかったです。
2015年、ドイツで開催されたレッドドット賞授賞式に出席
国際的なプロダクトデザイン賞 レッドドット賞を受賞した商品たち。
最近はお仕事バッグをリュックに替えたので、横型の6606を使っています。
キャリーの高さが低めなので、縦長のリュックを上に載せるとちょうどいいバランスです。リモートワークで持ち帰る荷物が多い日は、このキャリーで通勤しています。
2019年冬、2泊3日の長野旅行で使った6603
ビジネスで定番の、BLADEシリーズ。
ビジネスキャリーの中でも、縦タイプと横タイプに分かれるんですね。興味深い!真希社長がいまおすすめのキャリーはどれですか?
斉:ビジネスで言えばちょうど私も買い換えようかと思っているのがこちら、9月に新発売されたBLADE Plus 6211です。
先ほどお話しした人気モデル、BLADEシリーズがさらに進化して、キャリーバーを下すとブレーキがかかるストッパー機能や、USB充電ができる最新の国内向けモデルです。
機内持ち込みワンサイズのみですが、従来のビジネスケース、ブラック・ネイビーに加えて、アイボリーも新色として追加されました!
父が退院以来初の家族旅行を実現。
バリアフリー・犬OKの宿を選び、全員がリラックスできました。
わんちゃんを連れての旅行は、キャリーを手放すことも想定するので、ストッパー機能は必須
旅先でもワークするので、自分は使い慣れている6606に荷物をまとめ、両親の荷物はコンパクトにMALIBU 5208のSサイズ(拡張あり)にまとまりました。
まとめ
今回社長になられた経緯や背景を聞いていくと、LEGEND WALKERは「人」に寄り添うスタイルで、皆に愛されるブランドで温かいブランドであることがわかりました。スーツケースのユーザーも、作り手も、たくさんのストーリーがあります。今後も深堀りができればと思いました。
インタビュー/ライター:青木 敏紘