「スーツケース激戦時代」に求められる、理想のスーツケース選びの最適解とは? Part1

19世紀に欧米で登場した旅行用トランクを起源とするスーツケースの歴史。革製からアルミ製、樹脂製など、ボディの素材も変化し、現代では技術の進歩とともに、より軽量で強度が高く、多機能なものが続々と登場しています。デザイン性も進化し、その多様なラインナップから「スーツケース激戦時代」といっても過言ではないでしょう。

消費者にとっては選ぶ楽しさが増したと同時に、豊富な選択肢を前に「何が自分にとって理想のスーツケースなのか」取捨選択に困るという声も増えてきました。そこで今回は、現代のスーツケース激戦時代に求められる理想のスーツケース選びの最適解について、T&S 斉真希社長と、元敏腕バイヤーで “スーツケースの伝道師” こと佐藤宏樹氏、元添乗員で現在はフリーライターおよびスーツケース専門家として活動する藤井麻未氏が語ります。

佐藤宏樹 プロフィール

トラベルグッズを愛してやまない「スーツケースの伝道」。 舞台業界を経て、雑貨業界でスーツケースやトラベルグッズ、レイングッズの仕入れ・商品開発に長く携わる。TBS「マツコの知らない世界」等、テレビや雑誌、講演など幅広く活動。自宅には常時30台以上のスーツケースを所有する生粋のマニア

Instagram
https://www.instagram.com/suitcase.8/
ブログ
https://note.com/suitcase
ホームページ
https://suitcase-dendoshi.themedia.jp/

藤井麻未 プロフィール

元秘境系海外添乗員。現在はフリーライターとして、各国大使館、ANA、HIS、JRなど旅行関連媒体や雑誌に記事を執筆。添乗員時代に数多くのスーツケースを扱った体験をもとに、「スーツケース専門家」として各メディアで解説を行う。 ブログ「元添乗員の国外逃亡旅行記」や「WEBトラベル」での個人旅行プランの企画も人気。

Instagram
https://www.instagram.com/mamfuj/
WEBトラベル
https://www.webtravel.jp/ambassador/mamfuj/
ブログ
https://mamfuj.hatenablog.com/entry/2014/09/07/231813

理想のスーツケースを見つけるための入口は? ― 恋人選びと同じこと

Legend Walker Omotesando旗艦店内には、数多くの商品がシリーズごとに並ぶ

斉:
スーツケース選びというと、容量や泊数からサイズを決めるというのが一般的な選び方ですが、今回はそういった基本ではなく、専門家ならではのプラスアルファの視点や、皆さんが知らないような内容でスーツケース選びのポイントをお聞きしたいと思います。まずは、バイヤーとして数々のスーツケースを扱ってきた佐藤さん、いかがでしょうか。

佐藤:
そうですね。店舗でもいろんなお客様に接してきましたが、よく皆さんがおっしゃるのは「機能で選んだらいいのか、デザインで選んだらいいのか」ということです。正直、私はどちらでもいいと強調しています。特に、機能にスポットが当てられがちですが、デザインに注目して選ぶというのもすごく正しいスタイルだと思うんです。私は常々「スーツケース選びは恋人選びと同じ」と言い続けています。恋愛するときって、まずは見た目の印象で入るじゃないですか。「かっこいいな」とか「綺麗だな」とか。その後で中身を知って恋に落ちるわけですよね。スーツケース選びもこれと同じで、まずはデザインからのインスピレーションで入り、その後にキャスターやスペックなど中身を知って “結婚しよう” というのも全然いいと思うんです。

斉:
最初のときめきってすごく大事ですよね。「恋人選び」というキーワードは、一般的な選び方の記事にはなかなか出てこない面白い視点だと思います。では、外見でときめいた後、中身を知っていく段階で、藤井さんならどんな視点が考えられるでしょうか。

理想の機能は「お悩み基準」でみえてくる

藤井:
佐藤さんのおっしゃるように、最近はデザインが豊富なので、見た目で選ぶ楽しさが格段にアップしていますよね。では、その先の機能は?というところなんですが、機能に関しても、今は様々な便利なものが出てきています。ただ、全ての機能がパーフェクトに装備された「万人にとっての理想のスーツケース」というのがなかなか存在しないというのもまた事実です。では、数ある中から一体何を取捨選択したらいいのか、自分にとっての最適なスーツケースってどんなものなのか?迷われる方も多いんじゃないかなと思います。そんな場合には「お悩み基準」で考えて頂くといいのかなと思います。

海外添乗員として様々な国や地域に様々なタイプのお客様と旅を共にしてきた中で、スーツケースを持っての旅って、旅行スタイルや人によっていろんなプチストレスやお悩みが出てくるんです。たとえば、ある方は現地でお土産を沢山買うので帰りの荷物が増えてしまって収納に困る。また、ある方は揺れる電車やバス内でスーツケースを押さえながら子どもたちのケアをするのが大変だと。つまり、自分の旅行スタイルの中で「どんなお悩みが生まれやすいか」ということにまず注目する。そして、じゃあそのお悩みを解消するにはどんな機能があるのか?と考えれば、自分にとっての理想の機能というのがみえてくるんじゃないかなと思いますね。

斉:
すごく良いポイントですね。最近はスーツケースの機能がとにかく多いので、機能の数で選んでしまうと、選択肢が広すぎて難しくなってきます。逆に自分のニーズを知ったうえで、必要な機能を搭載されているものを選ぶということですね。

旅のスタイルやシーン別に考える、これがベストなスーツケース

斉:
理想のスーツケース選びのポイントが分かったところで、次は、具体的な商品を手に取りながら、実際にスーツケースを使用する旅のスタイルやシーンごとのベストなスーツケースについて議論をしたいと思います。
まずは、佐藤さん。30台ものスーツケースを所有されているとのことですが、旅のスタイル別に選ぶと、どんなスーツケースがオススメでしょうか。

キーワードは驚愕の「省スペース」!短期国内旅行に刺さる FIT

佐藤:
今は旅行のスタイルとして日帰り~1泊程度の国内旅行やビジネス出張も多いかと思います。私はほぼ日常的にスーツケースを使っていますが、これくらいの規模の移動となると、大容量は必要ない。一般的な小型の機内持ち込みサイズである30~40Lでさえ、大きいと感じる方も少なくありません。かといって、リュックであれば、パソコンや書類を入れて背負うと肩が凝るし、夏場なんか背中が汗びっしょりになってしまいますよね。そうなると、機内持ち込みサイズよりさらに小型の、コインロッカーサイズや超薄型タイプのスーツケースが役立ちます。

例えば、「FIT」は厚さが僅か15cm。ウソのように薄いんです。他社さんでも折り畳み式の薄型は出ていますが、組み立てが必要だったり。でもFITは、ビジネスや日帰り程度ならこの薄い状態のままで使えますし、荷物が増えればファスナーを開けるだけで簡単に拡張できるんです。拡張部分には特殊なプレートが内蔵されているため、たわみも気になりません。そして、私がFITで気に入っているところは、この驚きの薄さにより、収納時にも全く場所をとらないということです。ベッドの下や家具の隙間などにスッと収納することができて非常に省スペースです。

6031-47 FIT
Legend Walker 6031-47 FIT

LEGEND WALKER:6031-47 FIT

薄型から容量拡張機能で収納量が2.3倍にUP
薄くても余裕たっぷりな薄型スーツケース

斉:
ありがとうございます。私も通勤でFITを使っているんですが、場所をとるスーツケースを持っていると、電車内や人ごみで邪魔になったりするんですよ。でも、これは足の間に挟んだり、エスカレーターでも同じ段に置いたりできて邪魔になりません。まさに、生活にFITするスーツケースなんです。 藤井さんはいかがでしょうか?

旅行あるある「荷物が潰れてしまう問題」解消スーツケース CHALLENGER

藤井:
はい。私はこれまでいろんな方と旅行していく中で、皆さんが大体どんなところで困っているのかが見えてきました。

まず一つ目は、荷物が潰れてしまう問題。これについては、いろんなお客様から良いパッキング方法がないかと相談されてきました。荷物の中でも、特に箱型のお土産ですね。海外のお土産って箱が簡素だったりして、すぐ潰れちゃうんですよ。これに関しては、通常のスーツケースですとマチに深さがあるので、どうしても他の荷物と重ならざるを得ません。その結果、移動しているうちに他の荷物に圧縮されたり、中で動いてしまい、開けたときには潰れていたということになりがちです。

これを見事に解消してくれるのは、マチが不均等なタイプのスーツケースなんです。「CHALLENGER」がこのタイプです。両面のマチの深さが違い、片方は10cm程度の浅いマチになっています。この浅マチの部分が、実は箱型のお土産のサイズに大抵フィットするんです。箱型土産や、壊れやすいものを浅マチの方に全て集約していただいて、少しタオルなどで補強していただければ、他と重なることなく非常に綺麗に持ち運ぶことができるんです。お土産だけではなく、例えば高さのある帽子、ヒールのある靴、バッグ、男性の大きい靴・・・そういった嵩のあるものを、型崩れさせずに持ち運びたいときは、今度は深マチの方に詰めます。このように、マチが不均等なタイプのスーツケースであれば、深さの違いを利用して綺麗にその物の形に合わせたパッキングができるんです。

佐藤:
CHALLENGERはいいですよね!うちは甥っ子がサッカーをやっていて、海外遠征の時などに、嵩張るスポーツ用品なんかも入るので役立っています。マットなデザインもカラーもオシャレです。

斉:
お土産収納にピッタリだというのは、想定しなかった使い方です!最初作ったときは、アスレジャー(アスレチック&レジャー)をテーマにしたので、それこそ運動用具だったりアウトドアに使うようなものを入れようと思って。実際のユーザーの声は参考になりますね。

5114-70 CHALLENGER
Legend Walker 5114-70 CHALLENGER

LEGEND WALKER:5114-70 CHALLENGER

滑らかな走行と静音性を備えた独自開発のキャスターを搭載。荷造りが便利な奥行のあるデザインにスリムフレームが荷物をガード。

狭いホテル&空港でのパッキングが楽々、更にクローゼットにもなる LAYER

藤井:
そしてもう一つ、ホテルの部屋にスーツケースを広げる十分なスペースがない!というケースもよくあります。常に広々としたお部屋をとれる方は良いけれど、そうもいかなかったり、経費での出張であれば手狭なビジネスホテルになりがちですよね。また、海外でもパリやローマなどヨーロッパの街中のホテルは値段の割に部屋が狭かったりします。そうなると、ベッドの上でスーツケースを広げるしかないのですが、何となく衛生的に抵抗もありますよね。

こういうときは、圧倒的に片面開きが便利です。両面に開くタイプであれば、広げた時に二面分のスペースが必要ですが、片面であれば、その半分のスペースで済みます。また、最後に空港で荷物の整理をしたりお土産を入れたりする時にも便利。空港で両面をがばっと広げるのは周囲の視線も気になりますが、片面であれば、ちょこっと開けてささっと整理できるので、とても使い勝手が良いんです。

更に、この変化球として面白いのが、クローゼットのように使える「LAYER」。これは、中にタンスのような仕切りがあることで、立てたままの状態で荷物を出し入れできるというもの。衣類が多い方なんかには特に便利で、更に省スペースです。仕切りはマジックテープでついているので、どの位置に設置するのかは自由自在。簡単に取り外しができ、シンプルなワンボックスにすることも可能です。こういった細かいところに、独りよがりでない、ユーザーの身になったものづくりの視点が生かされているのかなと思います。

佐藤:
しかも、LegendWalkerさんは企画から商品化までが早いですよね! 他のメーカーさんであれば、だいたい2~3年かけて開発している間に市場が変わったりするんですよ。 しかし、 LegendWalkerさんは、アイデアを思いついたらもういつの間にか商品化まで出来ているんです。 ユーザーの声やニーズを素早く察知して即座に開発に活かせる、そのスピード感は素晴らしいと思っています。

斉:
ここまで気づいていただけて、開発側としてはすごく嬉しいです。LAYERというネーミングですが、これは実際コスプレイヤー5名様の協力によって、みんなで議論しながら開発したという経緯から来ています。衣類や小物などを最適な状態で運ぶためには可動式の仕切りがあると良いよね、というアイデアが出てきたりして。私たち開発側も、自分たちの人生経験しかないので、やはり開発側と実際のユーザーをもっと近いところに置いて一緒に物作りすることが大事だと考えています。

6033-66 LAYER
Legend Walker 6033-66 LAYER

LEGEND WALKER:LAYER6033-66

クローゼットを運ぶように立てたまま使用する、ストッパー付フロントオープンスーツケース。

スーツケースのトレンドとこれから

さて、Part1では、数あるスーツケースの中から、自分にとって理想のスーツケースをどう選ぶか、ということについて具体的な旅行スタイルやシーンを交えながら議論をしてきました。次回、Part2では、現代のスーツケースをとりまく社会問題やトレンド、そして業界の未来について、専門家ならではの視点から引き続き議論を深めていきます。

トップ
PAGETOP
トップ
x