本質を伝える ビデオグラファー・まきおさんのSTORY ~クリエイティビティは旅の数に比例する~
DATE企画から撮影・編集までを一貫して手掛け、YouTubeやコミュニティを通じた発信も行うビデオグラファー・まきおさん。
ドラマーとしてバンドでの音楽活動に長年携わり、その後、映像制作へと転身したまきおさんが大切にしてきたのは「本質を伝えること」でした。今回は、まきおさんの表現へのこだわり、そして取材や撮影旅行の相棒となるスーツケースについてお話を伺いました。また、LEGEND WALKERと共同で企画・開発を手掛けた映像クリエイター向けスーツケース「 FRAME-ONE」開発の裏側にも迫ります。

ビデオグラファーとは
「クリエイター」や「フォトグラファー(カメラマン)」はよく聞く言葉ですが、「ビデオグラファー」とはどのようなお仕事なのでしょうか?
クリエイターの意味は広く、音楽だったり、アートだったり、僕みたいに映像だったり様々なジャンルがあると思うんです。映像の世界って、元々製造業みたいに分業になっていて、プロデューサーが企画を、ディレクターが進行を握って、カメラマンが撮る。編集は編集しかしない。それが、ここ10年ほどで機材やパソコンが進化し、1人で作品を作れるという世界が出てきました。「ビデオグラファー」というのはそれ以降の言葉だと思います。クリエイターに含まれる映像のジャンルでありながら、撮るだけではなくて企画から編集まで一気通貫にできるのがビデオグラファーだということです。
ビデオグラファーとしての原点
まきおさんは、ドラマーとして長らくバンドで音楽活動をされてきましたが、ビデオグラファーを目指したきっかけは何ですか?
音楽活動をしていた頃、MV(ミュージックビデオ)を外注したこともあったのですが、やっぱり自分たちの音楽のMVは自分たちで作った方が、世界観がしっかり伝わるのではないかと思ったことがあって。挑戦してみたら、なかなかうまく表現できたというのがきっかけですね。
ドラマーとビデオグラファーとは、一見全く違うお仕事のようですが。
実は、音楽をやってる時も、映像をやってる時も、自分の中であまり違いがないんです。もっといえば、子供の頃はキノコが好きで、ずっとキノコの研究をしていました。手段は違うにしても、やりたいことに違いはないと思っています。多分、「本質はなんだろう?」という疑問に対する答えを形にして伝えるということが好きなのだと思います。
クリエイターとして大切にしていること
クリエイターとして、またビデオグラファーとしてのこだわり、大切にしていることは何ですか?
やはり、「いいものを、いかにして伝えるか」ということだと思います。ただ、クリエイター側のエゴになってしまってもいけないと思っています。たとえば、音楽でいうと、ドラマーとして高度な技術やスゴイ演奏ができるとしても、果たしてそれを強調することが音楽全体にとって良いことなのか?というのは別問題だと思います。また、映像の世界でも、高度な技術を強調しがちですが、大事なのはそこではありません。クリエイター側の満足が、ものごとの本質を伝えることの邪魔をしてはいけない、そのように意識するようにしています。
まきおさんにとって「いいもの」とはどういうものですか?
やっぱり、多くの人の心が動くものではないかなと思うんです。音楽の世界でいうと「Mr.Children」だったり。あれだけ多くの人を感動させられるものって、いいものに決まっているじゃないですか。一部のマニアに向けたものや、ニッチな世界というのも、もちろん素晴らしいのですが、やっぱり多くの人に届くものでありたいな、とは思いますね。
お仕事の中で、どういった時に喜びを感じますか?
そうですね、ものづくりをしている職人さんや、仕事に真剣に向き合っている人を撮影する瞬間です。今できることに全力を注いでいる姿を捉えられるとすごく嬉しいですね。また、そういった仕事ができたときって、自分の作品から改めて気付かされることもあるんです。
過去制作したもので、印象的な事例はありますか?
奈良で高齢の職人さんたちが手作りする地場産業のサンダルを、新しいブランドとして立ち上げる様子を取材・撮影しました。昔よくあった、「便所サンダル」のような懐かしいものを、現代の感覚で蘇らせる。そのままでは斜陽産業になりつつあるものを、どうやって新しいニーズに繋げるかといった試みなど、取材・撮影していて楽しかったですし、多くの人に伝えたいと思いました。
また、屋久島のライフラインである、物資を運ぶフェリーの老朽化問題を取り上げた作品もあります。屋久島の一般的なイメージは、雄大な自然の美しさだと思うんですが、実は、屋久島には1万人もの人が生活をしていて、文化もあります。そういった住民の生活と文化を支えてきたフェリーが老朽化で運休してしまうとどうなるか。この作品では、あえて自然ではなく、こういった問題に焦点を当て、最終的に「島国・日本全体の問題」へとメッセージを深めました。これは、実際現地に足を運んでみて、人に会って、作品を作ってみて気付かされたことでした。
クリエイティビティは旅の数に比例する
まきおさんにとって「旅」とはどのような存在ですか?
シンプルに、「未知のものを知りたい」という欲求を満たすものです。人一倍未知のものに対する好奇心が強いのかもしれません。僕の旅は、どちらかというと観光地を巡って「楽しむ」というよりも、「知らない町の人々の暮らし、文化、歴史を知りたい」という好奇心を満たすプロセスです。パリのファッションウィークを視察しに行ったのも、ガイドブックやネットを眺めているだけでは分からない、街の空気感や文化そのものを知りたかったからです。
実際に自分の足で移動する、旅の魅力とは何でしょう?
「行かないと分からない感動がある」ということです。先日、奥州平泉に行ったのですが、僕が一番感動したのは、意外にも寺院そのものではなく、側溝を流れる水の美しさでした。また、ミスチルの曲のMVに、青森の寒立馬(かんだちめ)という馬が出てくるものがあるのですが、馬の姿と曲のイメージが本当にピッタリで。まさに、こういったイメージって旅していないと浮かばないと思うんです。ネットで調べただけなら、インスピレーションの源にはならないと思うんですね。
クリエイティビティは、旅の数(=移動距離)に比例すると思います。現地に足を運んで得たフィジカルな体験や、自分だけの感性で得た、ある意味での「偏り」こそが、ネットの平均値しか出せないAI時代におけるクリエイターの武器になると考えています。
ビデオグラファーのお仕事をする中で、機材の運搬に苦労していた部分はどんなところでしたか?
やはり、三脚など長さがあるものを運ぶのに苦労していました。機材運搬用としてはキャンプ用のトランクなどを使うしかありませんでしたが、これらはたいてい2輪しかなく、重い機材を運ぶのにはかなり負荷がかかります。かといって、4輪となると一般的な旅行用スーツケースとなり、三脚や機材を運びやすい構造ではありませんでした。遠方へは飛行機で向かいますが、やはり三脚をどうやって運ぶかは課題でした。別途配送するしかないのですが、そうなるとちゃんと届くのか心配ですしね。
今回まきおさんには、映像クリエイターとしての目線で、スーツケースの企画・開発に携わっていただきました。こだわったポイントはどこでしょうか?
やはり、先ほどお話した悩みを解消すべく、三脚が入るだけの高さを確保したところでしょうか。フロント上部に、フリースペースがあるのもこだわったポイントです。ここには、ストロボやジンバル、照明など、移動中やちょっとした合間に出し入れしたい小物を入れることができます。寝かせることなく立てたままこれらを出し入れできる便利さには共感していただけると思います。また、4輪にしたことで、重量のある機材を入れてもスイスイ動かすことができ、驚くほど快適です。
画期的な特徴としては、トップにカメラを固定できるネジ穴を付けているところです。ここにカメラを固定し、スタンドとして使うことができるのです。スーツケースって、機材を出してしまったら、あとは場所を取るだけの存在だったのですが、これはスーツケース自体が機材の一部になるんです。
ハンドルに関していえば、このワイドハンドルは内部に干渉しないので、スペースを合理的に使えるのはすごく良いですよね。スーツケースの両面から出し入れできる構造なので、前後の区別が無く、非常に扱い易くて驚きました。あまり一般的に見ないワイドハンドルですが、この良さをぜひ知ってもらいたいですね。
逆に、実現が難しかったことはありますか?
本当は、ネジ穴をハンドルに付けて高さも調節できるようにしたかったのですが、さすがにハンドルを加工するのは難しかったですね。
実際に完成したものを使ってみて、何が一番よかったですか?

FRAME-ONEを、どんな方に使ってもらいたいですか?
そうですね、映像クリエイター初心者の方から、フリーランスで1〜2人で動くことの多い方にもぜひ使っていただきたいです。この業界では、運搬から撮影まで全て自分で行うという方も少なくありません。しかし、市場に出回っている商品には、まだまだこういった方々のニーズに応えられるものがないんです。
極端な話、このFRAME-ONE 1台とショルダーバッグ1つで、カメラ3台、照明2灯は1人で持ち歩けます。クライアントの予算によっては、単独で業務にあたらざるを得ない。でも妥協せずに良い作品を撮りたい。そんな方には特にオススメですね。
最後に、今後してみたい旅について教えてください。
やっぱり海外には行きたいですね。実は今度、現代アートの最前線を見るため、10日間のニューヨーク渡航を予定しています。湘南美術学院のプログラムで現代アートを学んでおり、仲間や講師と共にMoMAやギャラリーを巡る予定です。FRAME-ONEにお気に入りのカメラを詰め込んで、刺激を受けながら海外での作品制作や仕事の展開につなげていきたいですね。
おわりに
現地に足を運び、自身のフィジカルな体験を通して本質を表現し続けるまきおさん。感性を鍛え、「自分だけの偏り」を探求することこそが、AI時代に必要なクリエイターの強みかもしれません。相棒であるFRAME-ONEとともに未知の世界を追い求め、多くの人の心を捉える作品を生み出してくれることを、今後も楽しみにしています。
インタビュー:斉真希
ライター:藤井麻未
