
在米日本人留学生・津田賀玄さんのストーリー ~多様性を認め合う社会を目指して~
DATE日本のみならず、国際的にも多方面で活躍するLegend Walker(以下LW)ユーザーたち。今回は、ニューヨーク在住の日本人留学生、津田賀 玄(つだか げん)さんにお話を伺いました。アメリカで学者として活躍する中で体感した「柔軟性」の美しさ、そして現地生活の中でも長年愛用されているというLWの定番モデル6700 Anchorについて、津田賀玄さんのストーリーを紐解きます。

アメリカで心理学研究 津田賀玄さんのストーリー
――玄さんは大学時代からアメリカに留学して、いま8年目だと伺っていますが、どのような経緯で渡米されましたか?
僕は小学校から大阪のインターナショナルスクールに入学し、家では日本語、外では英語という生活を送っていました。両親とも日本人で、姉と兄も日本の学校に通っていましたが、僕は第一言語が英語。このような環境でしたので、僕だけがアメリカの大学に進学したのも必然的なことなのかなと思います。
――大学は文理学院「College of the Holy Cross」で哲学と心理学を専攻 、現在はニューヨークの真ん中にある「The New School for Social Research」にて文化心理学の博士号課程3年生と伺っています。心理学や哲学を海外で研究するというのは日本人としては珍しいかと思うのですが、玄さんはずっと心理学に興味があったのですか?
実は最初は医学部に進学する予定で大学に入学しました。しかし文理学院の面白いところは、専攻にかかわらず、哲学、心理学、宗教学、芸術、文学、数学、社会学など全科目を1単位以上取らなければならないという体系でした。自分自身は小さい頃から物理的な世界に興味があるのだと思い込んでいましたが、哲学や心理学を学んでいく中で、抽象的な世界 (見えないものの持つパワー)、それによって働く社会の原理に心から惹かれたのです。医学部に進むようなプレッシャーももちろんありましたが、好きな課題に対する研究を諦められず、この分野で大学院に進むことを決めました。
――とても大変な時期だったと思います。現在は心理学の領域でご活躍されていると思いますが、具体的にどのようなテーマを研究されてますか?
文化心理学(cultural psychology)と児童発展認知学(infant cognition)2つのテーマを研究しています。
心理学理論の歴史を振り返ってみれば、20世紀の心理学はほぼアメリカ人の男性だけを対象として成り立っていました。中でも、Western Educated Industrialized Rich Democratic (WEIRD)といって「西洋式教育を受けた・工業化社会の・金銭的に豊かな・民主主義を標榜する」サンプルだけが研究の対象だったのです。しかし21世紀になり、様々な文化圏・言語圏のデータを集めてゆく中で、当初の理論が崩れてきています。これを今「再現性の危機」と呼んでいます。
そこで、人間の基礎となる理論を再構築するために、現在では児童の認知の研究も並行して行っています。大人を対象とする実験では「なぜ?」という問いに対して対象が回答した言葉が、どこまで本意なのか分かりません。例えば「あなたはなぜ右足ではなく左足を先に踏み出したのか?」という質問に対して、言葉で簡単には答えられないでしょう。これに対し、言葉をもたない赤ちゃんを対象とすれば、目の動き方や集中力などを記録することで「本音」、あるいは人間が本来持つ反射神経みたいなものを研究することができます。
また、生後6~8カ月の赤ちゃんの集団性を測ることにより、どういったタイミングで、どのように社会性(物事の判断、整理、差別)が芽生えるのかをマッピングできれば、人間や社会の本質の部分に一歩近づけるのかなと思っています。
――西洋の知識体系をより多様性を持ったデータでリニューアルさせるのは非常に興味深いですね。玄さんはこの基礎研究、あるいは自分の知識や経験を今後どのように活かしていきたいですか?
自分の経験として、使用する言語と生活する環境によって感覚や価値観って変わるんですよね。「常識」というものが言語圏や地域によって違ったり、国や個人間の問題になっているのを目にすると、価値観の「柔軟性」をもっと世の中の人々に感じてもらい、多様な価値観を許容、共感してほしいと思います。
今流行っている「ダイバーシティ(多様性)」という言葉だけでなく、柔軟性を持てばより美しい社会が築けると信じています。そして、多様性は素敵なものだということを更に広めていきたいですね。
――玄さんの研究では多様性が存在することが事実として証明できるので、それを広めていきたいということですね。そのために意識していることなどありますか?
ファクト(事実)としてのデータだけでなく、それ以上に研究のメソッドも大事だと思っています。考えの柔軟性を取り込むには、違う分野・文化の人たちと手を組んで、結論に至るまでのプロセスにも、まさに「多様性」が求められます。大学のあらゆる部門と協業しながら研究するのが大事だと思っていますので、クロス部門で多様な意見を吸い上げることを意識しています。
――様々な国籍やバックグラウンドの方と協業されてるんですね。ニューヨークの研究室で日本人は少ないと思いますが、海外で8年間生活した中で孤独や寂しさを感じたことはありますか?また、玄さんにとってニューヨークはどのような場所でしょうか。
孤独は、コロナ禍で一年間家をほぼ出ない生活をしていた時以外は感じたことがないですね。逆にニューヨークは常に刺激を与えてくれる場所。孤独や寂しさを感じるまもなく、常に新しいチャレンジが待っています。自分で選んだ道である以上、とにかく前に進むことを意識していますね。
世界中の人々が尊重され、何もかもがゼロ・イチではなく、お互い認め合い愛する余裕がある社会。柔軟な考え方を持つ多様な社会・・・僕はニューヨークがその理想に近い場所だと思っています。
津田賀玄さんのLegend Walker:6700 Anchor
~壊れない、逃げない、愛する日本を運んでくれる相棒~
心理学研究のゴールとニューヨークでの生活について語ってくれた玄さん。渡米して8年、長く付き合ってきた相棒だという愛用の6700 Anchorも今年で6年目だといいます。玄さんにとっての、LWの魅力を聞きました。

各航空会社によって差はあるものの、やはりスーツケースの重量制限は多くの方が気になるところ。本体が重ければその分中に入れられる容量が限られ、超過分に対しては料金を支払わなければなりません。6700 Anchorは、本体の軽量化により、余裕のキャパシティを実現しています。

スーツケースのキャスターは少しの揺れや傾きでも簡単に転がります。特に海外の電車などは揺れが大きい場合も。重いスーツケースを不安定な場所で支え続けるのは、なかなかのストレスです。
「ニューヨークの電車って結構揺れるんです。急停車とかで勝手に荷物が飛んだりするので、ストッパーがあると心がちょっと落ち着きます。ちなみにストッパーをかけた時、周りの人が”手を離してる!”って見てくるので、”さすが、わが相棒!”と自慢しちゃいたくなりますね。」
キャリーハンドルと、キャスターブレーキを連動させたSSCシステムは特許取得済み。LWが独自に開発したストッパー機能です。キャリーハンドルを下げるだけでキャスターにブレーキがかかり、ワンタッチで坂道や揺れる車内などでも安定して自立することができるのですね。

さて、今回は、遠く離れたアメリカで心理学の研究を続けるLWユーザー津田賀玄さんのストーリーをご紹介しました。国際的に活躍する中で感じた「多様性」の素晴らしさや可能性、これらが実現する理想の世界に向けて更なる活躍を期待します。
2021年11月、LWはアメリカに初上陸する予定。今後も様々なトラベルシーンに寄り添うモデルを、皆さまにお届けします。
インタビュー:斉 真希
ライター:藤井 麻未