コスプレイヤーと一緒につくる!クローゼットキャリー「LAYER〈レイヤー〉」 誕生秘話 ~ 「レイヤーの、レイヤーによる、レイヤーのためのキャリー」づくり奮闘記 前編  ~

今や日本のコスプレ人口は、35万人強。市場規模は250億円とも言われています。コスプレ人気は日本にとどまりません。世界では数百万人もの愛好者がいると言われ、その規模は年々拡大しています。国内外を問わず市民権を獲得し、趣味として、また新たなカルチャーとして定着してきたコスプレ。そんなコスプレを楽しむすべての「コスプレイヤー」たちに向けて開発・制作されたティーアンドエスの新製品が、クローゼットキャリー「LAYER〈レイヤー〉」です。

様々なカタチで精力的に活動しているコスプレイヤーさんたちを企画段階から巻き込んで、共同開発された新製品「LAYER」は、まさに「レイヤーの、レイヤーによる、レイヤーのためのキャリー」。コスプレイヤー向け新製品「LAYER」は、いったいどのようにして誕生したのか…。着想から企画、開発、制作に至るまでの裏側を、斉真希社長に伺いました。

きっかけはX(旧Twitter)の投稿。 困ってるコスプレイヤーのために、何かできないかしら…

― ありそうでなかった「コスプレイヤー」向けの新製品。制作のきっかけは何だったのでしょうか?

斉社長:
「LAYER」制作のきっかけとなったのは、弊社の広報兼商品企画を担当するおおたにさんの一言でした。あるとき突然、わたしに企画を提案してきたのです。「社長!コスプレイヤー向けのキャリーをつくりましょう!」と。正直、最初は驚きました(笑)。けれど話を聞いてみると、いろいろ頷ける背景がありましたし、わたしたちティーアンドエスが動かねばならない!と思える環境が見えてきたのです。

おおたにさんがコスプレイヤー向け製品のニーズに気が付いたのは、X(旧Twitter)で関連情報のリサーチをしていたときのこと。コスプレイヤーさんたちの投稿を見ていて、実に多くのレイヤーさんたちが、衣装や備品を持ち運ぶ際に必要不可欠な「キャリー」や「スーツケース」に対して悩みを抱えていることに気がついたのです。



〈その一例がこちら〉

まえりさんポスト

まえりさんポスト:

キャリーケースを改造しているけれど難しい… 立てたまま使える製品をメーカーさんに作ってほしい!

翠さんポスト

翠さんポスト:

ウィッグが崩れないように苦労している写真を投稿。(もっと簡単に持ち運べる工夫ができるはず…)

― みなさん、いろいろと苦慮されていますね… そのままで使える「ちょうどいいキャリー」が見当たらない。

斉社長:
そうなんです。我々もレイヤーさんたちが、まさかこんなに多くの悩みやニーズを抱えているとはまったく知りませんでした。 「元レイヤー」(!)という異色の経歴を持つおおたにさんだからこそ気がつけたポイントでした。(笑) そしておおたにさんは、“元レイヤー”として投稿に共感するとともに、「スーツケースメーカーの社員として何かできないだろうか…」と考えて、「コスプレイヤー向けキャリー開発」という企画を提案してくれたというわけです。

〈それがこちら〉

― さすが「元レイヤー」!コスプレに対する愛情と製品開発に向けた情熱が伝わってきますね!

斉社長:
はい。様々なアイデアや企画を持ち寄って、製品化できるのは、企画・開発・製造 管理までを一貫して自社で行っている我々ティーアンドエスの強みです。わたし自身も、「やろう!」と思えばすぐやってしまう行動派、大谷さんの情熱はしっかりと受け取りました。とはいえ… 新製品の企画や開発というのは、簡単に着手できるものでもありません。最初は少し躊躇しました。コスプレ業界や関連産業についての知見がまったくなかったですし。ユーザーの声は確かとはいえ、市場規模の検証や従来とは異なる販路や取引先の開拓が必要になることも容易に想像がつきました。

― たしかにニーズはある… けれど不確定要素も多い。ハードルの高いチャレンジですね。それでも挑戦を?

斉社長:
はい。その通りです。数日間、悩みました。そして迷った末、「やろう!」と決意を固めました。 早速、おおたにさんの企画に加筆し、社内会議を経て、正式なプロジェクトとして新製品の開発に乗り出すことにしたのです。

わたしの決断を後押ししたのは、担当おおたにさんの熱い思い、そしてXに溢れるコスプレイヤーさんたちの悩みの「声」でした。我々はこれまでも常に、「ユーザーの声」に耳を傾けて、他社にはないユニークで高品質な製品を開発してきたという自負があります。そんなわたしたちティーアンドエスだからこそ、取り組むべき挑戦ではないか?ティーアンドエスだからこそ創ることができる製品なのではないか?…そう考えたのです。

みんなでつくろう!ワクワクする気持ちを形にしよう! レイヤーが実現したい、レイヤーのためのキャリーケースづくりの開始。

― 「ユーザーの声」が、今まで誰もつくらなかったコスプレ向け製品という扉を開いた!というわけですね。

斉社長:
はい!調べてみると、国内外には少なくとも70万人から数百万人ともいわれるコスプレイヤーやファンがいることがわかりました。そして同時に、コスプレイヤーたちにとっての「理想的なキャリーケースがない」という現実がある。みんなが悩んでいる。そう思うと、もうじっとしていられませんでした。この情熱をコスプレイヤーさんたちとわかち合い、一緒に製品を開発したい!一緒に本当に必要とされる製品をつくりたい!そんな思いで、共同開発をスタートしたのです。

― ワクワクする展開です!具体的には、どのようにプロジェクトを開始したのですか?

斉社長:
最初はぼんやり、「クローゼットのような使い方」を想像していたのですが… そもそもコスプレイヤーさんたちはどこに出かけるのか?何をするのか?キャリーには何を入れて、何を持ち帰るのか?…と何から何まで「わからないこと」だらけでした。 そんななか、これまでも様々な製品づくりを行ってきた経験から、「わからないことは聞く!」というポリシーを大切にしていました。そこで、発案者でもあるおおたにさんに、X(旧Twitter)を通じてコスプレイヤーさんたち一人ひとりに声をかけていってもらいました。そうして最終的に集まってくださったのが、今回、開発に協力くださった5人のコスプレイヤーさんたちです!

― 華やかですね!たくさんのフォロワーを抱え、イベントにも出演される第一人者の方々と伺いました。

斉社長:
はい。コスプレ黎明期から活動している「古」(いにしえ)と呼ばれるレイヤーさんから、近年ファンを増やして活躍しているレイヤーさんまで、コスプレ界の最前線で活躍している5人が、我々の企画に賛同し、協力してくださることになりました。Xフォロワーの合計数は、約10万人にも上ります。強力なプロジェクトチームが立ち上がりました!

メンバーが決まれば、あとは動くだけ。早速、5名のレイヤーさんたちとメールやメッセンジャーでこまめに連絡を取り合いながら、企画趣旨や意図を事前に共有しました。そしてティーアンドエス本社に集まっての顔合わせを行い、様々なアイデアを出し合う企画会議を実施していったのです。

2023年7月某日、ティーアンドエス本社での企画会議の様子

それぞれ在住地域やお仕事、年齢も異なる5人なのですが、「愛するコスプレ」という共通項を持つ仲間同士。初対面からあっという間に意気投合し、ユーザー像や使用シーンをどんどん描いていきました。さらに、キャリーのサイズは?内装は?色やデザインは?あったら便利な機能やオプションは?…といった具合に、“ユーザー目線”を活かした「理想のキャリー」像を具体化していきました。

コスプレ界の最前線で活躍するレイヤーならではの“ユーザー目線”で、様々なアイデアを出し合いながら、「理想のキャリー」を具体化していった。

それまでお互いを知らなかったメンバーが、「レイヤーにとって理想のキャリー」というひとつの目標に向かって一致団結し、会議を重ねながら一生懸命取り組んでいく姿は、まさに「モノづくり」の醍醐味そのもの。我々もモノづくりの原点に立ち返ったような感動を覚えました。

レイヤーたちの想いをカタチに!図面起こしとサンプル制作へ ~ もうひとつのポイント=「コスプレ以外」でも使える汎用性の両立

メインユーザーとなる「コスプレイヤー」さんたちに企画・開発に携わってもらい、様々なアイデアを吸い上げていくことで、一気に加速した新製品づくり。製品開発のフェーズは、図面作成を経て、サンプルを制作する段階に入りました。

― サンプル制作の段階でこだわったポイントや難しかった点などはありますか?

斉社長:
いよいよ実際の製品をつくっていくという段階で重要なポイントは、コスプレ以外でも利用できる「汎用性」です。もちろんコスプレイヤー向けの企画なので、コスプレ時に必要な要件は優先していきますが、我々メーカーとしては、コスプレ以外の場面でも様々な人たちに、様々な場面や用途で利用してもらえる「一定の汎用性」は担保したいと考えました。

この点については、コスプレイヤーさん側からのリクエストとも合致していました。「普段使いのしやすさ」、「シンプルなデザイン」といった汎用性も重要な要素である…とレイヤーさんたちからのフィードバックがあったのです。なぜならば、コスプレ業界では、イベントや撮影会等に参加する際、会場に到着するまでは着替えない、コスプレの格好のまま公の場には出ない・・・といった約束事、暗黙のルールが存在するのです。ですから、キャリーの機能としてはコスプレ用途に特化していても、デザイン上は、「普通のキャリー」「シンプルなスーツケース」であることが理想的…というのがポイントでした。

― 機能性と汎用性の両立… メーカーとしては悩ましくも挑戦しがいのある課題ですね。

斉社長:
そうなんです。まさに、メーカーとして力量を試される「挑戦」でした。ある特定のジャンルや用途に「特化」しつつも、一定の汎用性を持たせる…相反する要素を両立させるのは容易ではありません。

例えば、一般的にスーツケースは、多機能になればなるほど重量が大きくなってしまいますし、価格も高くなってしまいます。「あったらいいな…」という希望ポイントはできる限り叶えてあげたいのですが、すべてを取り入れるには限界があります。

そんな局面で、大いに助かったのが、数値化したり、明文化しきれない「温度感」、リアルなユーザー感度でした。プロジェクトメンバーとして協力してくれたレイヤーさんたちの意見を「生」で聞くことができたからこそわかる「温度感」は、サンプル制作時のひとつの指針になりました。例えば、単純に「ストッパー欲しいよね…」ではなく、ストッパー機能はどういった場面で必要なのか?どの程度困っていて、他の機能と比較した際の優先度はどの程度なのか?…といったニュアンスです。ユーザーの息づかいを感じられるような「生のニーズ」を把握できたことで、最終的に「ちょうどいい」バランスの製品ができたと思います。

― 生の声をしっかり感じ取ることの大切さを感じます。レイヤーさんとの接点でほかにも収穫はありましたか?

斉社長:
はい、もう一つ驚いたのは、レイヤーさんたちの「DIY力」です!考えてみたら、もともとコスプレに必要な衣装やアイテムを自作してしまう凄腕の方々です。ハンガーやフック、バンドといった汎用品を活用して、キャリーケースの中身や外側に自分で使いやすいようにちょっとした「カスタム」をしてしまうんです。ケースの外側にシンプルな「D環」を付けてあげれば、ベルトループのように工夫して柄の長い装具を掛けて持ち運ぶことができます。キャリー内部の「仕切り」も可動式にすることで、各自の荷物の大きさに合わせて仕切り板を移動させるだけ。このように最初から作りこみすぎずに、あえて「余白」を持たせるという考え方は、我々メーカーにとっても目からうろこの発見でした。どうしても、我々メーカー側、つくり手側は、ディテールまで作りこみたがってしまうのですよね。実際、今回の新製品「LAYER」は、一般的な従来のスーツケースのようにケース形状に沿って荷物を入れるという考え方とはアプローチが異なります。自分たちが持ち運びたい荷物や置き方をユーザー自身が決めて、内部のレイアウトを自由に変更できる。自分仕様にカスタムできる。そういう余地、余白があるというのは、スーツケース、キャリー製品としては、革命的だと自負しています!

試作品の完成&ブラッシュアップを経て、感動を分かち合うお披露目会へ!

― 実物への期待が高まるお話ですね!サンプルが出来上がると、気持ちも一段と盛り上がるのでは?

斉社長:
はい!そうして出来上がったサンプル(試作品)を皆さんにご覧になってもらうときはドキドキでした!お披露目にあたって、ふたたびレイヤーの皆さんに本社に集まっていただきました。サンプルを見て、触って、最終的なフィードバックをいただく場でもあります。
ここに至るまで、レイヤーさんたちには、貴重な意見やアドバイス、たくさんのアイデアをいただいてきました。それらを踏まえた試作品を、今度は我々が皆さんにお見せする番・・・ 果たして皆さんの期待に応えるモノをつくることができたのか・・・ 期待と不安が入り交じる気持ちで、ドキドキしながらサンプルをご覧になってもらいました。レイヤーさんたちから、歓声と感動の拍手をいただけたときは、ほんとうにホッとしました!

「本当に実現したんですね!」「めちゃくちゃいい!」「可愛い!」「早く使いたい!」「コスプレ仲間たちにも紹介したい!」

サンプルを前に、一気にテンションが上がり、喜びをわかち合うレイヤーさんたちと弊社担当者たち。早速、サンプルに触れながら、使い勝手やディテールの仕上がりを確認し、ワイワイ楽しみながら最終の修正点を出し合う場となりました。

試作品を手に取って、早速、フィードバックをまとめた最終会議

― ほんとうに、「みんなでつくりあげた新製品」なのですね!チャレンジは大成功!

斉社長:
はい!プロジェクトメンバー全員の弾けるような笑顔を見て、「本当にこのチャレンジをやってよかった!」と実感しました。 そして同時に、この先のわたしたちの使命は、開発メンバーが感じたこの喜びと感動を、今度はより多くの人たちにしっかりと伝えていくこと、そして世界中のコスプレイヤーさん、そしてコスプレイヤー以外のたくさんの方々にも新製品「LAYER」を手に取ってもらうことだ!と決意しました。

後編に続く

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